Coolify と Dokploy は、自分の VPS に入れると、Git に push するだけでアプリを公開できるようにするツールです。Vercel や Heroku のような使い勝手を自分のサーバーで実現できるため、「セルフホスト PaaS」と呼ばれます。
どちらも公式のスクリプト1行でインストールできます。ただ、インストールした直後のサーバーは無防備な時間があり、開くポートも多くなります。そこで、両方を別々の環境に実際にインストールし、メモリ使用量と開いているポートを確かめました。
結論:比べた結果
| 項目 | Coolify | Dokploy |
|---|---|---|
| 版(2026年10月24日時点) | 4.5.0(4.0.0 で正式版になった) | 0.30.10(まだ 0.x の版) |
| アイドル時のメモリ(実測) | 約352MiB | 約874MiB |
| 公式の最小要件 | 2コア、メモリ 2GB、ディスク 10GB | メモリ 2GB、ディスク 30GB |
| 管理画面のポート | 8000(ほかに 6001、6002) | 3000 |
| 仕組み | Docker(複数サーバーにも対応) | Docker Swarm(インストール時に有効化) |
| 有料のクラウド版 | 月5ドルで2サーバーまで | 月4.5ドルで1サーバー〜 |
- メモリを節約したいなら Coolify です。手元では、Dokploy の半分以下でした。
- どちらも、動かすアプリの分のメモリが別に要ります。たとえば Dokploy(約0.9GiB)に Dify(約2GiB)を載せると約3GiB になるため、アプリを載せるなら 4GB のプランが目安です。
- どちらを選んでも、インストールしたらすぐに管理者を登録することと、VPS の管理画面のファイアウォールで必要なポートだけを開けることが重要です。
実測1:アイドル時のメモリ
公式のスクリプトでインストールし、管理者を登録してから10分待って測りました。アプリはまだ1つもデプロイしていない状態です。
Dokploy は本体のコンテナだけで約800MiB を使っていました。どちらも、この上に動かすアプリのメモリが加わります。たとえば n8n を載せるなら約400MiB、Dify なら約2GiB が上乗せになります。
検証環境についての注意
測定は、Mac の上に作った Linux 環境(arm64)で行いました。多くの VPS(x86_64)とは CPU の種類が違うため、同じ値になる保証はありません。
実測2:インストールにかかった時間
| 項目 | Coolify | Dokploy |
|---|---|---|
| インストールの時間 | 約4分 | 約3分 |
| スクリプトの結果 | 「失敗」と表示(下記) | 成功 |
Coolify のスクリプトは、最後に「起動して60秒たっても正常にならない」として失敗を表示しました。ただ、そのあと1分ほど待つと、Coolify は正常に起動していました。同じ表示が出たら、すぐにやり直さず、docker ps で coolify のコンテナが healthy になるかを数分待って確かめてください。
実測3:外に開いているポート
インストール直後に、サーバー上で待ち受けているポートを確かめました。
| ポート | Coolify | Dokploy | 用途 |
|---|---|---|---|
| 80、443 | 開く | 開く | アプリの公開(リバースプロキシの Traefik) |
| 8000 | 開く | — | Coolify の管理画面 |
| 6001、6002 | 開く | — | Coolify の画面の更新とターミナル |
| 8080 | 開く(応答なし) | — | Traefik の管理用。手元では接続しても応答はなかった |
| 3000 | — | 開く | Dokploy の管理画面 |
| 2377/tcp、7946/tcp・udp、4789/udp | — | 開く | Docker Swarm の通信 |
ここで気をつけたいのは、Docker が公開したポート(80、443、8000、6001、6002、8080、3000)は、OS のファイアウォール(ufw)の設定を通らない点です。基本手順の記事でも解説したこの仕様について、Coolify と Dokploy の公式ドキュメントも、ufw だけに頼らず、VPS 事業者のファイアウォール(またはコミュニティ製の ufw-docker)を使うよう案内しています。
VPS の管理画面のファイアウォールでは、次の順序で設定します。
- ドメインと HTTPS を設定するまでは、SSH、80、443 に加えて、管理画面のポート(Coolify は 8000・6001・6002、Dokploy は 3000)を自分の IP アドレスからだけ許可する。
- ドメインと HTTPS で管理画面を開けるようになったら、管理画面のポートを閉じ、SSH、80、443 だけにする(公式の案内)。先に閉じると管理画面に入れなくなるため、順序に注意してください(Dokploy の公式ドキュメントも警告しています)。
Docker Swarm のポート(2377 など)は、複数のサーバーをつなぐときだけ必要で、1台で使うなら外に開ける必要はありません。
インストール直後の「登録画面」に注意
どちらも、インストール直後に管理画面を開くと、最初の管理者を登録する画面が表示されます。手元でも、両方でこの画面が誰でも開ける状態になっていました。
Coolify の公式ドキュメントは、「登録画面に最初にたどり着いた人が管理者になり、サーバーの root 権限を得られる」と警告しています。管理者を登録したあとは、Coolify はログイン画面に、Dokploy はトップページに転送され、登録画面は使えなくなりました。
インストールが終わったら、ほかの作業より先に管理者を登録してください。 心配なら、インストールの前に VPS の管理画面のファイアウォールで、管理画面のポートを自分の IP アドレスだけに許可しておくと確実です。
脆弱性の公表状況
GitHub のセキュリティアドバイザリを数えると、2026年1月1日から10月24日に公表されたものは次のとおりでした。
| 項目 | Coolify | Dokploy |
|---|---|---|
| 公表された件数 | 61件 | 56件 |
| うち Critical | 16件 | 33件 |
どちらも、チームのメンバー(ログインできる人)が、サーバーの root 権限でコマンドを実行できてしまう種類の問題が多くを占めます。PaaS はサーバー上のすべてのコンテナを操作できるため、乗っ取られると影響が大きくなります。
なお、件数の多さがそのまま安全性の差を表すわけではありません。Coolify の多くは2025年に番号が付いたものや、正式版になる前に修正済みのものです。件数は、開発元がどれだけ積極的に公表しているかにも左右されます。
なかでも重かったのは、Dokploy の CVE-2026-45631 です。認証に使う秘密の値がプログラムに固定で書かれていたため、ログインしていない人が管理者になりすませる問題でした(0.27.0〜0.28.8 が対象)。
被害を避けるために、次の3点を守ってください。
- 管理画面のアカウントは自分だけにし、むやみにメンバーを増やさない
- 管理画面のポートを公開したままにしない
- 新しい版が出たら早めに更新する
どちらを選ぶか
- Coolify は、正式版になっていて、メモリの使用量も少なめでした。リバースプロキシを Traefik から Caddy に切り替えることもできます。メモリと版の成熟度で選ぶなら、こちらです。
- Dokploy は、インストール時に Docker Swarm を有効にし、Swarm のクラスタを前提にした作りです。まだ 0.x の版で、手元ではメモリの使用量が Coolify の2倍以上でした。なお、リポジトリの一部(
/proprietaryディレクトリ)は別のライセンスで、本番での利用には商用の契約が必要とされています。
Coolify の公式ドキュメントは、ほかのアプリと同居させず、新しいサーバーに入れるよう勧めています。Dokploy も、80、443、3000 番が使われているとインストールに失敗するため、実質的に新しいサーバーが前提です。すでに Dify や n8n を動かしているサーバーに後から入れるのは避けてください。
VPS を選ぶとき
公式の最小要件はどちらもメモリ 2GB ですが、アプリを載せる余裕を考えると 4GB のプランが現実的です。
| サービスとプラン | 1ヶ月契約 | 最長契約の月額 | ファイアウォール | 新規申込 |
|---|---|---|---|---|
| WebARENA Indigo4GB、4コア、SSD 80GB | 1,630円 | 1,630円なし(時間課金のみ) | 未確認セキュリティグループ | 停止中 |
| KAGOYA CLOUD VPS4GB、4コア、NVMe SSD 600GB | 1,760円 | 1,617円12ヶ月(年額) | 初期状態は全許可セキュリティグループ | 停止中 |
| シンVPS大容量メモリ 4GB、3コア、NVMe SSD 50GB | 1,800円 | 1,350円36ヶ月 | 未確認パケットフィルター | 受付中 |
| ABLENET VPSL2、3コア、SSD 80GB | 2,167円 | 1,706円12ヶ月(年払い)初回 1,536円 | 記載なし | 受付中 |
| ConoHa VPS4GB、4コア、SSD 100GB | 2,189円初回 1,752円 | 1,691円36ヶ月初回 1,285円 | 初期状態で拒否セキュリティグループ | 受付中 |
| XServer VPS4GB、4コア、NVMe SSD 150GB | 2,640円 | 2,035円36ヶ月 | 初期状態で拒否パケットフィルター | 受付中 |
| さくらのVPS4G、4コア、SSD 200GB | 3,520円 | 3,227円12ヶ月 | 一部だけ制限パケットフィルター | 一部のみ受付 |
に各社の公式ページで確認した価格です。1ヶ月契約は更新時の価格で、時間課金・日額課金しかない会社は月額の上限を載せています(ConoHa VPS は一括前払いの1ヶ月の価格で、時間課金はこれより上限が高くなります)。最長契約の月額は、最も長い契約期間の料金を1ヶ月あたりに換算した額です。ファイアウォールは、VPS の管理画面で設定できるものの初期状態です。申込の受付状況は変わりやすいため、契約の前に公式ページで確かめてください。
- ABLENET VPS: 初回の価格は「契約時特別価格」で、最初の支払いだけに適用されます(期限の記載なし)
- ConoHa VPS: 初回の価格は 2026年10月29日までのキャンペーン価格で、申し込み時だけ適用されます
XServer VPS とシンVPS はアプリイメージ、ConoHa VPS はスタートアップスクリプトで、Coolify や Dokploy を入れた状態のサーバーを作れます(各社の公式ページで確認)。ただし、テンプレートで作った場合も、上で書いた「すぐに管理者を登録する」と「ファイアウォールで必要なポートだけを開ける」は同じように必要です。各社のファイアウォールの違いは セルフホスト用 VPS の選び方にまとめています。